アーティスト・はらだまほをはじめて知った|「ことばとからだの往復書簡展」レビュー

2021年11月27日〜28日の2日間、ダンス井戸端会議メンバーであるはらだまほの主催で「ことばとからだの往復書簡展」が墨田区の古民家、京島駅2Fと旧邸稽古場の2会場で開催されました。
「ことばとからだの往復書簡展」とは、前年の企画である「ことばとからだの往復書簡」で創作された7人の作家による映像作品に、はらだまほと熊谷理沙という2人の作家がパフォーマンスやインスタレーション、音声展示などで返答をした作品展です。ダンス井戸端会議からも作家や映像出演、スタッフなど多様なスタイルで公演に参加しました。普段、ディレクター、行政関係者、ダンサーとして異なる立場で文化芸術に関わる3人の眼差しで捉えたレビューを掲載します。

往復書簡展を後にしたときに残ったものは「アーティスト・はらだまほをはじめて知った」ということだった。

彼女とは大学の同期であり在学中から一緒に踊ったり、考える機会がよくあった。そのときから彼女のことを私とはいる場所が違う人であり、見ている景色が近いけれど全く違うものを見ていると感じていた。

彼女と私はともにコンテンポラリーダンスという世界にいるが、この世界は広すぎる。私は2つのカンパニーで踊っていた経験があるが、2つとも違うジャンルの踊りかのように見え方も作品へのアプローチも異なる。また、同じカンパニー作品であり自分の中での作品との向き合い方が一貫していても作品ごとに体内で起きることが全く違うことが私はよくある。

Photo by 野村稔

私は彼女の作品譜に挑戦した経験がある。彼女はリハーサルの中で常に「質感」を大切に扱っていた。実際、彼女の紡ぐことばには温度や色があるように感じた。しかし私はこの時、感じた温度を身体で表現することにかなり苦戦した。私の中にはことばと身体の間にかなり距離があるようだった。
はらだ自身の声だけではなく、女優の方に頼んで作品譜を読んでいただき踊ったこともある。しかし、多少の変化はあったが自分の中での「何か違う」を払拭することはできなかった。

今回、「ことばとからだの往復書簡展」に足を運びやっとはらだの世界を知ることができた。体感できた。自分の中だけではわからず理解できていなかった部分が、今回ことばから始まった複数の作品があること、またそれをはらだがどう展示するかを一気に知ることができたことにより腑に落ちる感覚があった。一つ一つの作品を彼女の手により展示することで作品単体で見るときと全く景色が異なっていた。会場までの道のりも全て彼女の世界のように感じた。展示会場となっている建物の持つ温もりや光、そして細かな彼女のこだわりがとても優しく私を包むようであった。

なかなか言語化することが難しいが彼女のやりたいことの片鱗を感じることができた。そして、創り出す事のできる彼女を羨ましくも思った。私はあくまでダンサーで作者になれない。作品の匂いを感じ、発展させることはできるが0から作ることはできない。彼女には創り、表す力があるのだなと改めて尊敬した。

私にもダンサーとして作品の中で生きるときに大切にしているこだわりがある。それは「その作品の中で生きること、息をすること」。彼女の作品はとても自然だと私は思う。彼女のように表現し、作品やそれを表現する自分自身とも向き合いたいと思った。
また、ダンスに関わらない人が彼女の世界に触れることを強く願う。

片山夏波

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この記事を書いた人

4歳よりクラシックバレエを始める。
バレエ団附属のスクールにも通っていたが自分とバレエは合わないと思っていた。
中学からコンテンポラリーダンスを習い、立教大学映像身体学科で多くの仲間に出会った。その後、Noism(Noism Company Niigata)で活動し、現在はBATIKで活動している。
ひとの身体に興味があり、身体のスペシャリストを目指して鍼灸あん摩マッサージ指圧を勉強中。療育の現場や幅広い年代の方との間でわくわくするダンスを共有したいと考えている。